対人援助の感性を磨く - ホスピス医に学ぶ -
小澤 竹俊 先生 めぐみ在宅クリニック院長 在宅ホスピス医
人は、「この人は自分の痛みを分かってくれる」と感じたとき、はじめてその苦しみを言葉にし、安心して打ち明けることができます。しかし、自分とは異なる背景や価値観を持つ相手を、そのまま「わかる」ことは決して容易ではありません。
小澤竹俊先生は、「人は他者を完全に理解することはできないが、『理解者であろうとすること』はできる」と語ります。そして、相手の本当の理解者になるためには、自分の価値観や考えを押し付けるのではなく、目の前の人の声に丁寧に耳を傾け、その人の世界を尊重する姿勢が何より大切であると説いています。
本講座では、ホスピス医として長年にわたり多くのいのちと向き合ってこられた小澤先生を講師にお迎えし、スピリチュアルケアの理論を土台に、「人の苦しみとは何か」「人に寄り添い、支えるとはどういうことか」を深く学びます。知識として理解するだけでなく、具体的な事例や体験的なワークを通して、日々の支援の現場における「寄り添う」という営みを、より実感をもって捉えていきます。
対人援助に携わる方にとって重要な「相手の苦しみに気づく力」や「ともに在る姿勢」を見つめ直し、自らの関わり方を振り返る機会としていただけたらと思います。専門職の方はもちろん、人と関わるすべての方にとって、実践に活かせる学びが得られる内容です。Zoomのブレイクアウトルームを使って受講者同士でワークを行います。
※受講に関するお願い
本講座は、参加者同士のワークを含む実践的なプログラムです。双方向の学びを大切にしているため、当日はリアルタイムでご参加いただける方を対象としております。
子育てを支える - 発達障害・愛着・トラウマの視点から -
田中 哲 先生 子どもと家族のメンタルクリニックやまねこ院長 児童精神科医
子どもに何か問題が起きたとき、私たちはつい「誰のせいか」と原因を求めてしまいがちです。行動の背景を十分に捉えきれないまま、子どもや養育者に対して評価や指摘が先行してしまう場面も少なくありません。
しかし実際には、その背景に発達障害や愛着の課題、トラウマなど、さまざまな要因が複雑に重なり合っています。子どもの「育てにくさ」は、本人の特性だけでなく、これまでの経験や関係性の中で形づくられており、単純な理解では捉えきれないものです。そして、その中で子育てを担う養育者自身もまた、戸惑いや負担感、孤立感を抱えながら、困難な状況に置かれていることが少なくありません。
子どもを支えるためには、まず養育者を支えるという視点が欠かせません。養育者の理解と安心が、子どもの育ちや関係性の回復に大きく影響していきます。
本講座では、発達障害・愛着・トラウマという視点から子どもの行動の意味や発達のプロセスを捉え直し、親子関係の理解を深めていきます。日々の実践に活かせる基礎知識とともに、対人援助職としてどのように子どもと養育者に関わっていくか、その具体的なヒントを学びます。
講師は、発達障害・愛着の問題に長年取り組むとともに、被虐待児支援にも携わり、子どもと養育者の双方に温かいまなざしを向けながら支援を続けてこられた田中哲先生です。
強迫症を治す - 理解と支援の第一歩 -
松永 寿人 先生 兵庫医科大学教授 精神科医
強迫症(強迫性障害)は、「心配性」や「几帳面」といった性格の延長として捉えられがちですが、その境界は非常に分かりにくく、本人でさえ気づきにくいという特徴があります。しかし実際には、強い不安や恐怖にとらわれ、「やめたいのにやめられない」思考や行為に支配される、深い苦痛を伴う疾患です。
繰り返される確認や回避行動は、日常生活に大きな制約をもたらし、やがては本人だけでなく、家族や支援者もその対応に巻き込まれていきます。その結果、生活全体が強迫症の影響を受け、社会生活の維持が困難になるケースも少なくありません。また、外出そのものが難しくなるなど、受診に至るまでのハードルが高いことから、必要な支援につながれず、孤立してしまう方が多いのも大きな課題です。
本講座では、強迫症治療の第一人者であり、臨床・研究の双方で豊富な実績を持つ兵庫医科大学教授・松永寿人先生をお招きし、強迫症の基礎理解から、実際の支援場面に活かせる具体的な関わり方までを体系的にご講義いただきます。症状のメカニズムや悪循環の構造を理解することは、支援の質を大きく左右します。また、適切な対応を知ることは、ご本人の回復を後押しするだけでなく、支援者自身の負担軽減にもつながります。
専門的な支援資源が限られている今、地域や現場で関わる援助職一人ひとりが「正しく知る」ことの意義は、これまで以上に高まっています。本講座が、強迫症に苦しむ方々への理解を深め、より良い支援の第一歩となることを願っています。
【受講にあたってのお願い】
本講座では、より理解を深め、実践的な質疑応答の時間を充実させるため、事前課題を設けております。
松永寿人先生のご著書
『強迫症を治す 不安とこだわりからの解放』(幻冬舎新書)
をご一読のうえ、ご参加くださいますようお願いいたします。
宗教2世への理解と支援 - 見えにくい困難にどう向き合うか -
平野 学 先生 平野カウンセリングオフィス代表 公認心理師・臨床心理士
近年、元首相銃撃事件をきっかけに、特定の宗教団体の問題が大きく報じられ、社会的な関心が高まりました。その後、団体の解散という大きな動きもありましたが、この問題が解決されたわけではなく、さまざまな課題が残されています。
なかでも近年、少しずつ注目されるようになってきたのが、いわゆる「宗教2世・3世」と呼ばれる方々の存在です。子どもの頃から特定の信仰や価値観の中で育つことは、その人の生き方や人との関係に、さまざまな影響を及ぼすことがあります。けれども、そのしんどさや葛藤は外からは見えにくく、周囲が気づきにくいことも少なくありません。
本講座では、長年にわたりカルト問題に取り組んでこられた臨床心理士・平野学先生をお招きし、昨年開催した「カルト問題―その理解とかかわりに向けて―」の内容を簡単に振り返りながら、宗教2世・3世の方々がどのような経験をしてきたのか、事例を交えて丁寧に見ていきます。
そして、子ども期から成人期に至るまでの歩みをふまえながら、支援者としてどのように関わることができるのかを、一緒に考えていきます。心理職だけでなく、福祉、医療(看護師・医師)、教育、司法など、それぞれの立場からできる関わりや、多職種で支え合う視点についても触れていきます。
また、日本臨床心理士会が2024年12月に公表した『宗教カルト関連心理相談ガイド』も参考にしながら、現場で役立つ基本的な視点や、具体的な対応のヒントについてもご紹介します。
このテーマは、どこか特別な問題のように感じられるかもしれませんが、実は私たちの身近なところにも存在しています。「まず知ること」、そして「どう関わるかを考えること」。その両方を大切にしながら、見えにくい困難に少しずつ近づいていく時間になればと思います。
心理職の方はもちろん、福祉・医療・教育・司法など、人と関わるさまざまな立場の皆さまのご参加をお待ちしております。
ASDとADHDの共通症状
柏 淳 先生 ハートクリニック横浜院長 精神科医
近年、ASD(自閉スペクトラム症)とADHD(注意欠如・多動症)の「併存」という考え方は広く知られるようになり、実際に両方の診断がなされるケースも増えています。一方で、現場では「不注意」「衝動性」「落ち着きのなさ」といった、一見すると共通して見える困りごとへの対応に悩む声も少なくありません。これらの行動は一見するとADHDの特性として理解されがちですが、必ずしもそうとは限りません。例えば、ASDに特有の認知の偏りや、状況や文脈の理解の難しさが背景にある場合、同じ「不注意」や「衝動的に見える行動」であっても、その意味合いや支援のアプローチは大きく異なります。表面的な行動だけで判断してしまうと、本来必要な支援とかけ離れてしまう可能性があります。
しかしながら、「併存」という言葉の広まりによって、複数の診断名を前提に理解しようとするあまり、一つひとつの困りごとの背景にある認知特性や環境との相互作用が十分に検討されないまま支援が進められてしまうことがあります。その結果、支援がうまく機能せず、支援者・本人双方にとって行き詰まりを感じる場面も見受けられます。
本講座では、診断名ではなく、「目の前の困りごとがどのようにして生じているのか」という視点から丁寧にアセスメントする視点を学びます。ASDとADHDに共通して見られる症状を手がかりにしながら、その背後にある認知や行動のメカニズムを整理し、より適切で効果的な支援へとつなげるための実践的な視点を学びます。
講師は、大人の発達障害臨床において豊富な経験を持つ、柏 淳 先生です。
気分のゆらぎ - 双極症から発達障害まで -
柏 淳 先生 ハートクリニック横浜院長 精神科医
「気分の波」と聞くと、双極症(双極性障害)を思い浮かべる方も多いかもしれません。しかし実際には、「気分のゆらぎ」はそれだけに限らず、うつ状態の一部やトラウマの影響、発達障害の特性など、さまざまな背景をもつ人に見られるものです。
私たちの気分は、日々の出来事に影響を受けながらも、ある程度の範囲の中で自然に調整されています。けれども、この調整がうまくいかなくなると、ちょっとした出来事でも気分が大きく上下し、自分でもコントロールが難しくなってしまうことがあります。その結果、人との関係がうまくいかなくなったり、仕事や日常生活に支障が出たりすることもあります。
こうした「気分のゆらぎ」は、決して本人の性格や努力不足の問題ではありません。それぞれに理由や背景があり、その違いを理解することがとても大切です。
本講座では、精神科での豊富な臨床経験をもつ柏 淳 先生を講師に迎え、「気分のゆらぎ」についてわかりやすく整理していきます。双極症だけでなく、うつやトラウマ、発達障害など、さまざまな視点からその特徴を見ていきながら、「なぜこのようなゆらぎが起こるのか」を丁寧にひもといていきます。
また、診断名にとらわれすぎず、「目の前の人がどのように困っているのか」「どのような関わり方が助けになるのか」といった、日常の中で役立つヒントについても考えていきます。
ご本人はもちろん、ご家族や支援に関わる方にとっても、「気分のゆらぎ」への理解を深め、よりよい関わり方を見つけるきっかけとなる内容です。
講師は、大人の発達障害の臨床にも詳しい精神科医、柏 淳 先生です。
精神分析から学ぶ心の読み方
岩倉 拓 先生 あざみ野心理オフィス主宰 臨床心理士
精神分析というと、どこか特別で敷居の高いものに感じられるかもしれません。
しかし、その知恵を「人を見る眼差し」として借りることは、目の前の人の「心の地図」を手に入れることに似ています。
地図を広げてみると、それまでバラバラで不可解に思えた言動も、その人が懸命に生き抜くための「理由」や「意味」として、少しずつ立ち現れてきます。
一見「困った行動」と感じられる振る舞いも、その人なりの精一杯の適応であり、こころを守るための大切な働きであると理解できるようになります。
また、こうした視点は、支援の中で生じる援助者自身の感情――戸惑いや怒り、あるいは強く関わりたいという思い――を理解する手がかりにもなります。
それらを単なる個人的反応としてではなく、関係の中で生まれている意味あるものとして捉え直すことで、より落ち着いた、一貫性のある関わりが可能になります。
精神分析は、特別な人のための治療理論である以上に、私たちが目の前の人をより深く、多層的に理解するための、豊かで優しい「道具」です。
すぐに変化が見えないときにも、「この関わりは確かに届いている」と感じながら、焦らず伴走していくための視点を与えてくれます。
本講座では、精神分析をご専門とし、幅広い分野で心理支援を行っている岩倉拓先生をお招きし、支援現場における精神分析的な心の理解について学びます。
ケーススーパービジョンを通して学ぶカウンセリングの技法
福島 哲夫 先生 大妻女子大学教授 成城カウンセリングオフィス所長 臨床心理士
カウンセリングの現場では、「ただ話を聴く」ことにとどまらず、支援者のあり方そのものがクライエントに大きな影響を与えます。ときに、自己開示や積極的な介入といった“かかわり”が、関係性を深め、変化のきっかけとなることもあります。しかし、それらは単なるテクニックとして用いられるものではなく、支援者自身の誠実さや臨床的な感受性に支えられてこそ意味を持ちます。
本講座では、実際のカウンセリング事例(ケース)をもとに、講師がスーパービジョン(助言・検討)を行います。ケースに対してどのように見立て、どのような意図をもって関わるのか——そのプロセスを具体的にたどることで、日々の臨床に活かせる視点と実践的な技法を学んでいきます。
参加者の皆さまには、スーパービジョンのやりとりを“追体験”するかたちで、関わりのポイントや背景にある理論、そして臨床家としての姿勢について理解を深めていただきます。経験の浅い方にとっては実践のイメージを掴む機会として、また経験を重ねている方にとっても、ご自身の臨床を見つめ直す貴重な機会となるでしょう。
講師は、統合的精神療法を専門とし、幅広い理論的背景と豊富な臨床経験をもとに後進の育成に尽力されている福島哲夫先生です。常に臨床家として現場に立ち続けてこられた先生の視点と語りから、技法にとどまらない「臨床の深さ」に触れていただける講座です。